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宇多田ヒカル「Fantôme」を聴いて

音楽

Fantôme

Fantôme

遅ればせながら宇多田ヒカルの新譜を聴いた。周りには僕を含めて熱心なファンがいるわけでもなかったのだが、今回のアルバム「Fantôme」に関しては絶賛の声ばかりだ。感想としては、とても良いものだった。今までちゃんと聴いてこなかったのを後悔するくらい。


宇多田ヒカルといえば長い間国民の歌姫に君臨しており、今更好きとかそういう次元ではないなという感じだった。日本人として生きている以上、宇多田ヒカルの曲を耳にすることはいくらでもあったし、ゲームやドラマの主題歌になってしょっちゅう聴いていた。だから、漠然と好きではあったけれども少なからず距離感があった。友達がカラオケでたまに歌うとか、上手くないから歌いたいけど敬遠してるとか、僕もカラオケではたまーに歌うくらいのレベル。そういえば中学生の頃のヤンキーもどきが家では宇多田ヒカルばっかり聴いてる、という話を聴いてから印象が変わった記憶がある。あのヤンキーもどきも今ごろ新譜を聴いているのだろうか。あとは数年前に宇多田ヒカルの「Colors」という曲にどハマりして、帰り道のひとけも街灯もない真っ暗闇の中、その曲を歌いながら家路についていた時期があった。こうやって書くと僕の人生に結構関わっているように思えるかもしれないけど、距離はあった。流行りの歌手を好きと公言するということは、過去・最新のシングルとアルバムをくまなくチェックし、テレビ出演の際には正座して心待ちにし、ライブに積極的に参加する義務が課せられると思い込んでした。好きのハードルを上げて自分で距離を開けていた。でも今回のアルバムを聴いてから、その距離が一気にゼロになったような、僕の何かを刺激するようなやさしい衝撃があった。心地よくて、安らかな曲ばかり。亡くなった母に対して書いた曲というのも後になって知った。そういうのを踏まえて聴くと、また違った印象を受けると思う。ジャケット写真は原圭子に似せているのか、それとも本当に母親に似てきているだけのことなのだろうか。


僕のお気に入りは「二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎」で、天才と天才が手を組んだ名曲。いったいどれほどのアーティストが嫉妬していることだろうか。上に書いた法則で言うと、僕は椎名林檎が好き"だった"。椎名林檎が歌うと妙にエロティックになる。このアルバムだけのことを言えば、僕の個人的な意見だけど椎名林檎の声は鋭利で殺傷能力のあるような声色をしている。それがスパイスとなり、宇多田ヒカルの声が包み込むような優しい声色になっている。


僕は流行りの音楽に疎いという自負があったけど、今回衝撃を受けたことは事実であり、僕にとってはプラスになった。今もまた、このアルバムを聴いて穏やかな、幸せな時間を送っている。