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ムーンライズ・キングダム (2012) 映画感想

 

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  監督:ウェス・アンダーソン

  出演:ジャレッド・ギルマン/カーラ・ヘイワード/ブルース・ウィルス/エドワート・ノートン

 

(あらすじ)ニューイングランドの小さな町。居場所をなくした少年と少女が出会い、恋に落ちる。駆け落ちして行方をくらませた2人を大人たちは必死に捜索するが・・・。 

 

子どもならではの閉塞感の中では、自分と似た境遇の人間に救いを求めて互いを鏡のようにして孤独を分かち合うことがある。両親のいない少年と、難しい年頃の少女は出会うべくして出会い、ニューペンザンス島という小さな島で逃避行を企てる。しかしその土地柄、大人たちの手から逃れることは簡単ではない。それでも彼らは逃げる。それは逃避行という名の冒険である。

 

絵図の美しさと随所に出てくるアイテムが、何とも可愛らしい。しかしながら、深読みしてしまう癖があるので、この計算されつくした可愛さにどこか不気味さを感じてしまった。この可愛さの中にも少しばかりの狂気がスパイスとなって、不思議な魅力を作っている。

 

カメラの視点だったり服装やインテリア等の表現がまるでアニメーションのようだった。女の子が望遠鏡を覗くところなんかは画面が同じように望遠鏡の形になり、一緒に望遠鏡を覗いているかのような気分になる。「望遠鏡は魔法」「どんなものでもすぐそこにあるように見える」と女の子がいうように、女の子にとって望遠鏡はどんな時にも外せない特別なものである。少年も眼鏡をかけているわけだけれど、少年にとっては眼鏡も似たようなものなのではないだろうか。レンズ越しに見える世界は別物であり、冒険という大それたものではないにしろ、片時も外せない特別なものだ。

 

少年と少女は、この映画では保護者や福祉施設などから守られる側の子どもであることは揺るぎない事実なのだが、当人たちはきっと自分のことを一人の立派な人間であり、また大人たちからもそう扱われるのが当たり前だと思っているような節がある。だがとっさの出来事で傷害事件を起こしてしまったり、レコードの貸出期間を10日間としてしまうあたり、どこか現実を見ていないような幼い部分もある。いわゆる子どもから大人への過渡期なのだろうと思う。

 

少年少女が駆け落ちして結婚するというのは『小さな恋のメロディ(1971)』を思い出す。また、孤独な少年少女が惹かれあうというのは『ぼくのエリ(2010)』と似ているように感じる。この映画に共通するのは大人が邪魔で無能に見え、助けてくれる存在とは程遠いということだ。

 

肝心のタイトルは最後に出てくるわけだが、二人の思い出の地でもある入り江の名前を"ムーンライズ・キングダム"にしてしまうとは。"サンライズ"ではなく"ムーンライズ"。二人の逃避行を見守っていたのはきっと太陽ではなく、月なのだ。