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新海誠の作品 「ほしのこえ」と「星を追う子ども」 映画感想

新海誠監督の「秒速5センチメートル」と「言の葉の庭」は前々から観ていたのだが、Netflixに過去作品が一挙上がっていたので何となく全て観てみた。8月5日に新作の「君の名は。」が上映されるので、今まで響かなかった新海誠の作品が他の作品だったら自分に響く可能性もあり、一応確認という形で観てみたのだ。それが想像以上に面白かった。「秒速5センチメートル」と「言の葉の庭」は背景描写の緻密さにびっくりしてジブリとは違った形の新しいアニメの時代が来そうだ、と漠然と感じた。ストーリーもジブリの壮大なものとは違って心情をひたすら描いた、いわば日本的要素が多いアニメだと思った。そしてそれを家のテレビで観るのはもったいないことだった。作画だけではなく、耳元で囁いているかのように声優の息づかいまで聞こえ、耳がぞわぞわした。ただ、1時間にもわたる繊細すぎる男女の恋慕を見守るのは少し気恥ずかしさを覚えた。少女漫画ともまた一味違う、初恋と女を信じて疑わない純粋な男のピュアさと簡単に裏切る女には残酷さをも感じたし、とにかく観た後に何だかわだかまりの残るアニメだったのだ。全作品を観て思うのは、新海誠自身、未だに初恋に囚われているんじゃないかということだ。それくらい彼の作品には初恋の面影があるし、自身の投影じゃなくても彼の美学というのがそういうものにあるのだと思うと自分とは何となく合わない気がした。

 

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「秒速」と「言の葉」にあまり響かなかったのだが、「ほしのこえ」、「星を追う子ども」はかなり良かった。「ほしのこえ」は2002年の自主制作アニメで、音声以外のほとんどの作業を監督一人で行ったらしい。20分ちょっとという短編アニメなのだが、これが一人で作ったというのは信じられない程完成されている。出てくる人物は中学生が描いたんじゃないかと思われるようなレベルなのだがだんだんそれが気にならない程溶け込み、最後の方はそれが味になっている。しかし背景描写はそのころから健在で、光や宇宙の描き込まれ方が今と変わっていない。これもベースは恋愛なのだがSFチックなので恋愛が物語を助長するものになっているので他作品から感じる気恥ずかしさを感じない。それも短編アニメだからというのがあるのかもしれないが、この「ほしのこえ」は新海誠の作品の中で一番好きなアニメかもしれない。

 

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よくジブリに似ていると言われる「星を追う子ども」はおそらく意図的にジブリに似せている。しかしそれはリスペクトを込めたオマージュなので、パクリと言われて評価が低いのは残念だと思う。登場人物も全員ジブリ作品のキャラで出来上がっているような印象を受けたがテーマと共にちゃんとジブリ作品とは差別化が出来ている。テーマが「死を乗り越える」という少し重いものなので少し暗い作品ではある。しかし一回だけでは読み取れなかった部分があるのでもう一度観てみたい。それほど深い作品ではあると思う。

 

この監督の作品で気になったのは、ほぼ全ての作品に「本」が正確に出てくることだ。「文学」を大切にしている人なのか。あと空と空を飛ぶことに憧れがあるのかと感じた。宮崎駿がそういう人なので、ただ単にそういう尊敬の念を込めているのかもしれないが、過去作品には宇宙や空がテーマのものが多いし、緻密な背景作画からもそういう憧れからきているのか、とふと思った。

 

一人の監督の作品を全て観るというのは一貫した何かを発見できる上に、自分とは何が合わないのかがわかる。それを踏まえたうえで違う見え方が出来るので、過去作品一括観ることができてよかった。