ユー・ガット・メール (1998) 映画感想

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監督:ノーラ・エフロン

音楽:ジョージ・フェントン

出演:トム・ハンクスメグ・ライアングレッグ・キニア

  

題材はEメールと古いが、今とは確実にインターネットのあり方が違っていて面白い。今となってはSNSで知らない人と交流するのは珍しくないし、仲良くなった人と実際会うのに抵抗がない人も多いだろう。なので、今この映画を観ても少なからず現在と重なる部分があって何だか新鮮に感じてしまった。もちろんインターネットで知り合った人と実際に会ったことはない。だが自分にとっての"shopgirl"や"NY152"が現れたら実際に会ってしまうのだろうか、とふと考えてしまった。

 

主人公のジョートム・ハンクス)とキャスリーン(メグ・ライアン)はEメールを通じてメル友となっている。だが二人は知らず知らずにニューヨークの街で何度もすれ違い、後に商売敵として出会うこととなる。この二人のネット上の駆け引きと実生活でのすれ違い具合がもどかしく、連続ドラマでじっくり見てみたい。二人が仕事のことで仲違いしていくほど、メール上で親密に言葉を交わして親交を深めていくのがもどかしい。すれ違いが現実とメールの世界で成り立っている。

 

1つ疑問に思ったことがある。二人は当初仕事もうまくいっていて恋人もいる、いわば精神的に満足している状況なのだ。そんな二人がメール上で異性と連絡を取り続けるのだろうか。もちろん、その頃のインターネットのあり方が違うのはよくわかる。その頃はインターネットの黎明期であり、最先端な道具なはずだ。記者でさえまだタイプライターを使う時代である。彼らはちょっとした日常の刺激のつもりで使っていたのだろうか、自らの恋人にも秘密にしている。

 

しかし二人の会話に注目してみると、映画の序盤から二人は恋人に冷めていることがよくわかる。そのことに二人が気がつくのは劇中なのだが、会話に注目するとキャスリーンは恋人であるのフランクへの愛を無意識に忘れている。だからこそインターネットを始めたのか、二人とも関心が恋人よりもメル友となっていく。文字だけの関係とは不思議なもので、相手の知らない部分が多くあるほど相手を美化しやすい。”NY152”がどんな人物かも知らずに、無意識に彼の言葉に惹かれるキャスリーンだが、もちろんジョーも”shopgirl"に惹かれている。しかもジョーに至ってはネット上のキャスリーンと実際のキャスリーン両方に惹かれているので彼女に2回恋をしている始末だ。

 

ジョー家族の経営する大型チェーン店である「フォックス・ブックス」とキャスリーンの個人経営の「街角の小さな本屋さん」の対立があるが、辛辣にも大型チェーン店が買ってしまう。だが本屋以外にも、劇中にスターバックスが何度も登場するのはこの対立に大いに関係があるのではないだろうか。スターバックスといえば、今やアメリカ中どこにでもあるチェーンのコーヒー店で、コーヒー業界の中ではジョーの経営する「フォックス・ブックス」と重なる。一方で、キャスリーンの店は待ち合わせ場所に使ったカフェが当たる。

 

スターバックスが個人経営の店を潰したような直接的な描写はないが、スターバックスがニューヨークの他の店を圧迫したのは考えられる事実だ。しかし、彼女は当たり前のようにスターバックスでコーヒーを購入する。それも何度も。この時点でジョーの店がキャスリーンの店を奪うのは仕方がないように思える。彼女のような人間こそがスターバックスではなく、個人経営のコーヒー店でコーヒーを買うべきなのだ。彼女がスターバックスのコーヒーを愛飲している時点で、彼女の店が時代の波に飲まれてしまうのは自明だったはずである。別にジョーでなくても時代が変わればチェーン店がおのずと現れ、彼女の本屋が経営破綻する可能性は大きかったはずだ。

 

商売話はさておき、二人の恋愛に戻る。ジョーとして会う最後の瞬間に、「約束を破った男のことは許せるのにボクの小さな罪は許せない?」と問うシーンがある。その小さな罪というのは彼女の店を潰したことなのだが、親から受け継いだ大事な本屋を潰したことは彼女にとって小さいわけがない。ここの部分は私が理解していないだけで、他に何か意味があるんじゃないかと思う。考えすぎかもしれないが。

 

そんな波乱万丈を乗り越えて、二人は公園で"shopgirl"と”NY152"として出会うこととなる。ジョーが現れた際にキャスリーンはビックリしたような、困惑したような表情を浮かべる。そして「あなたでよかった」と言い、ジョーと結ばれることとなる。彼女はそこで気付いたのか、はたまた薄々感づいていたのか、お見舞いのあたりでジョーに惹かれていた様子がうかがえるので二人が結ばれて結果オーライだ。