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愛のむきだし (2009) 映画感想

愛のむきだし(2009)

 

愛のむきだし

 

監督・原作・脚本:園子温

出演者:満島ひかり西島隆弘安藤サクラ

 

 

2015年11月の「ぼくらの時代」で映画監督同士の対談が行われた。ゲストは岩井俊二紀里谷和明園子温でその中でも園子温は異才を放っていた。こういう変人こそが映画を作るのだと思った。今思えば「愛のむきだし」の主人公の親子関係は監督自身の子供時代の親子関係が少なからず影響しているようだった。

 

愛のむきだし」は 4時間にもわたる長時間映画である。しかし体感時間は4時間どころか2時間映画と変わらない。途中で中だるみすることなくあっという間に時間が過ぎた。テレビドラマを観ているような感覚にもなったがクラシック音楽が効果的に使われており何やら壮大なものを観ている錯覚に陥った。映像や内容もトリッキーなものがあり中毒性がある。

 

登場人物の紹介も過去と絡めてあり魅力的に描かれている。歪んだ性格や悲惨な過去も最早彼らのアイデンティティになっている。最後の回想シーンで主人公たちの出会いを流すのは長時間映画ならではの効果であると思う。体感時間は短いが展開は早いのでそういえばそんなことが起きたのはそんなに前だったのか、とハッとする。

 

最初は3人の視点を通して過去からさかのぼって物語は進んでいくのだが3人とも幼少期に親からの虐待や一瞬の洗脳を経験している。それが思春期で爆発してしまったのが「愛のむきだし」というタイトルにつながる。ユウの親からの圧迫は「ぼくらの時代」で園監督が話していた自身の幼少時代の話と似ている。番組では親が厳しすぎて全裸で登校していた話をしていた。監督がどういう意思で全裸で登校していたのかはわからないがユウが懺悔のために悪いことを繰り返していたのは少なからず監督のこういった経験を反映しているのではないだろうか。

 

安藤サクラ演じるコイケの存在感は人一倍ある。 笑った時に目が綺麗な三日月になるのがサイコパスに見えてとてもいい。彼女も可哀想な人間なのだが最後まで救いがなかった。彼女から感じる内面からの純粋な狂気は恐ろしく、彼女を突き動かすパワーがすさまじい。ヨーコ・ユウ・コイケ以外ではヨ―コの母親がとてもいいキャラクターを演じていた。ユウの目を通して見たヨーコの母もとい父の愛人は愛に飢えた厭らしい女ゴリラのように映っていたのだが、ヨーコの目を通すとキラキラ輝く素敵な女性に見えてしまうのが不思議である。この女が全ての元凶となっているのにだんだん許してしまう自分がいる。

 

この映画の実話の部分は新興宗教にハマった妹をAV監督である兄が救ったというところだけらしい。宗教や洗脳に視点をあてるというより「愛のむきだし」を描くのにそれらが肉付けしたというように感じる。登場人物全員狂っていて思想が強く、宗教の深刻さが薄れてしまった。こういう人こそハマってしまうのだな、と思ってしまう。

 

2008年の映画ということで当時は満島ひかりもAAAの西島隆弘も世間では有名ではなかったと思うのだが完璧な配役だった。初々しい面と狂気を孕んだ演技も両方上手くよくこんな二人を見つけ出したと脱帽した。さらにコイケ役の安藤サクラも素晴らしかった。この3人の演技が全力の体当たり演技で観ていて飽きなかった。

 

だからといって体当たり演技でお腹いっぱいになることはなく、満島ひかり西島隆弘をずっと眺めていたい映画だった。安藤サクラも主演に入れてやれよとも思うがやはりこの映画の主人公はユウとヨーコである。この映画の最後を観ればそう思う。

 

この監督が変態と言われる所以を知った。確かに変態以外なにものでもない。だがこの人の映画がとても面白いことはわかった。次はメンタルの強い時に「冷たい熱帯魚」を観てみたい。AAA好きなきゃぴきゃぴ女子に「愛のむきだし」観た?と積極的に聞いてみたい。