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カイバ (2008) アニメ感想 

アニメ

カイバ(2008)

テレビアニメ(全12話)

監督:湯浅政明

声優:桑島法子能登麻美子水田わさび、他

 

 

このアニメは二周したが理解しきれないところがたくさんあった。自分の解釈が正しいのかわからないのでみればみるほど新しい発見があり面白い。知名度のわりに熱狂的なファンがいるのはこういった面白さがある点だと思う。鬱アニメの話になると名前が挙がるイメージだが2008年にWowowで深夜放送されただけなのでリアルタイムで観ていた人がどれだけいたのだろうか。口コミで広まった隠れた名作アニメであると思う。

 

3話から7話までは鬱展開が多いため鬱アニメ枠に入っているが、最後まで観ると印象は変わる。毎話ハッピーエンドでは終わらず人はあっけなく死に、それを省みる行為がないのでそう言われるのだと思う。よくみればOPにでてくる登場人物はほとんどいなくなってしまうのだがそれが「死」という概念とはまた違う。この世界の「死」は精神的な死と肉体的な死の両方あって、片方の死が訪れても片方が残っていれば本当に死んだわけではなく、死にきれない。肉体は滅びても精神は宿ることがある。またその逆も然り。その死にきれない状況がこの世界の虚しさや悲しさを形作っている。

 

音楽

このアニメの特筆すべきところはストーリーの深さのほかに、音楽がある。OPの「Never」もEDの「Carry Me Away」もこのアニメの雰囲気に合っていて神秘的である。音楽プロデューサーにビョーク風のシュールな音楽を作る人がいるのでこの曲もどことなくビョークらしさを感じる。

 

OPとEDを歌っているのはSeiraという方でカイバの世界観に合っている歌い方をしている。どんな人か気になって調べてみたらモデルかつ女優の加賀美セイラだった。ピカルの定理での活躍をみていたので歌手活動をしていたのは驚きだった。そして何より加賀美セイラの顔つきがビョークに似ているとずっと思っていたのでもしかしたらビョークに似た雰囲気の人をキャスティングしたのかと想像した。

 

カイバを語るうえで外せないのが挿入歌の「The Tree Song」ではないだろうか。この曲はほぼ毎回使われていて、流れてきたら大体鬱展開とほぼほぼ決まっている。この曲はとにかく素晴らしい。

3話「クロニコのながぐつ」で家族で弾くピアノバージョン、6話「筋肉質な女」でおばあさんが歌う日本語バージョンなどアレンジされて使われている。アカペラバージョンもあったりと不安定な曲調と歌声で何とも言えない気持ちにさせてくれる。歌っているのはシンガーソングライターのminako "mooki" Obata という方。

 

モデル

キャラクターデザインは手塚治虫を意識しているらしく可愛らしい。なので残酷なシーンが引き立つ。ものすごくグロいというわけではないのに可愛らしいキャラクターたちが可哀想な目にあってるのは精神的にくるものがある。

 

個人的には2話から7話の完結型の話が引き込まれてカイバの世界を楽しめたのだが後半になるにつれて話が駆け足に進んでわかりにくい展開になってしまった感じがある。

 

「記憶」と「愛」

この世界の人たちは記憶をチップにして身体をチェンジすることが可能。お金がある人は良質なボディを手に入れ、貧乏人は自分のボディを売って動物やロボットの身体を買い、貧富の差が如実に表れている。

 

心と身体を切り離すことが簡単になったので「死」の概念が違う。ボディがなくなっても記憶チップさえあればいつか復活できる。しかしチップを破壊、もしくはチップ化していなければこの世から消えてしまいこの世界での「死」を意味する。哲学の分野からこの話を見てみるとまた違った見解が得られそうである。

 

ここら辺の問題が前半の鬱展開につながり、最終的に主人公カイバの使命や存在意義にも繋がってくる。とにかく考えさせられるテーマなので考察や解釈が個人個人変わってくると思う。表情一つとっても観る人によってだいぶ受け止め方が変わるだろう。

 

この「記憶」というテーマに人間のエゴが見え隠れする。記憶の管理を効率よく使っている人がいる一方、反記憶管理団体というのも出てきて「記憶の管理は人間のエゴかそれとも幸せか」ということも後半での議論になる。

 

人間の醜い欲望が描いれていて、それが必ずしも成就するわけではないという終わり方が多いと感じた。だけど、そこに愛はちゃんとあるんだよ。という監督のメッセージがあるような気がする。このアニメのテーマはあくまで「記憶」なのだが「愛」ありきのテーマなんじゃないか、と考えることがある。

 

どの話も結局は「愛」がある。

それが記憶によって見えにくくなってしまう。

記憶は「愛」があるから価値がある。なんて。