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若林正恭著「社会人大学人見知り学部卒業見込」 読書感想

書籍

社会人大学人見知り学部卒業見込み(2015)

オードリー若林が本を出した。

 

そのことを知ったのはいつだったか忘れたが、ピースの又吉がべた褒めしていて興味が湧いた。ダ・ヴィンチで数年にわたりエッセイを書いていたことも全く聞いたことがなかった。

 

若林といえばかつては「オードリーのじゃない方」と言われていたが、今では春日と立場が逆である。初めて彼らを認識したのはM-1の漫才だっと思う。春日の目立つルックスとマスコット的なキャラクターが好きで、当時何故か春日で爆笑していた。しかしだんだんと若林のトーク力が露呈していきお笑いの実力では若林>春日の図が出来上がったようだった。

 

アメトーークで"人見知り芸人"や"気にしすぎ芸人"の企画をやりだしたのもこの図が出来上がった後だった。アメトーークは毎週観ているが、この回は凄く面白かったのを覚えている。テレビで人のマイナス面やコンプレックスになる部分をフォーカスすることはあまりなかったからだ。"中学の頃イケてないグループに所属していなかった芸人"や"運動神経悪い芸人"同様、コンプレックス回はとても視聴者の共感を得るようで、ゴールデンスペシャルでは毎回のようにやっている。

 

特に"中学の頃イケてないグループに所属していなかった芸人"はテレビで賞を取ったとか。同じ立場の視聴者に勇気を与えるということで、見事にコンプレックスを笑いにかえたことが証明された。芸人は笑い話にするのが当たり前だが、一般の人には難しい。だが芸人が笑いに昇華することで同じことで悩んでいた人は気持ちが楽になる。みんなこんな感じなんだ。よかった、と。

 

そして若林の本もネガティブ人間なりの考えが読み取れる。正直共感しまくった。自分も中二病みたいなところがあって無駄に自意識だけあるのかもしれないと思った。だが若林のエッセイは数年にわたって書いてあるので、ページを進めるごとに彼自身の心境の変化があり、自分でツッコミをいれている。若林は昔、無自覚に中二病全開のブログを書いていたらしい。もう削除されてしまったがとても面白いブログだったに違いない。しかし若林にとっては黒歴史だ。このブログも数年後見返したら同じ感覚を味わうかもしれない。

 

スターバックスに一人で行けないのは自意識過剰あるあるというか、一部を除いた日本人あるあるだと思う。私もそうだった。何語かわからないトールだとかフェラペチーノだとかを正確に伝える勇気がない。ドトールで十分だと思っていた。しかし若林がそれを克服するように、私も去年ついに一人で入れるようになった。しかもホイップクリーム増量まで言えるようになった。スターバックスを利用する理由はいくつかあるのだが、一番の理由は無料wi-fiが飛んでいるからだ。スターバックスに歓迎されてからは、今まで勇気がなくて入れなかった自分が小っちゃいと思うようになった。別に誰もお前のことなんて気にしてねえよ。だがドヤ顔でMacを操作している青年をみると、お前とは違うんだからなと思うことはある。

 

そしてこの本には"ツチヤタカユキ"という人物がしばしば出てくる。おそらく相方春日よりも出てくる。当時ハガキ職人として有名だったらしい。そんな彼は人間関係が不得意で、高校時代クラスメイトとは一切会話せずに大喜利を考えることに精を出していたらしい。そんな彼が若林の目に留まり、上京して放送作家の道を再び目指した。もう今は人間関係不得意をこじらせて辞めてしまったらしいが、彼の名前を検索するとブログが出てくる。

 

ブログは二種類ある。一つ目の"笑いのカイブツ"という名のブログを読んでみた。しかし途中までしか読めず、途中からは有料である。有料のブログだなんで今の時代儲かるのかと思うがおそらく彼の場合は儲かるのだろう。途中までしか読めないが、続きを猛烈に読みたくなった。あるお笑い芸人の漫才を作っているらしく、ブログも漫才口調だった。

 

そして二つ目のブログは"月刊ツチヤタカユキ"というもので、今のブログを始めるにあたりこちらは撤退したらしい。しかし今のところ記事は2つだけ残っている。色んな芸人の漫才を作って載せているのだが、カンニングの漫才は竹山と中島二人の漫才だった。何年も前のブログなのかと思ったが日付は2016年だった。つまり彼が学生の頃(10年ほど前?)に作ったものを載せているらしかった。彼の芸人に対する執念がすさまじい。そして今こうして芸人に関する仕事をすることが出来ている。彼の情報はほとんどないのに彼に興味津々な自分がいる。

 

春日についての描写も興味深く、若林と対局な存在にいるのが相方・春日である。春日はポジティブで揺るぎない自身を持っている。努力はしていない。とのこと。しかし彼の考え方・振る舞い方が真逆なことでオードリーとして絶妙なバランスになっている。先日テレビの生放送で630万回の耐久テストに耐えた椅子を壊し瞬く間にネットで拡散された。これも二人揃っての出来事だった。

 

この本を読んで良いなと思った一文がある。

 

二十代の頃はお金がなくて海外旅行なんて考えたことも無かった。帰りの飛行機が羽田に着いた時少しあけすけになったぼくの気持ちを恥と世間体と見栄の向かい風が大きく減速させて地面に停止させた。(グランドキャニオン p.282)

 

二十代・三十代と時を経て彼が変わったことがわかる文。これを成長というのかはわからないが、なぜか心に刺さった。

 

そして読み終えてからこの本の帯を見る。

そこにはぎこちない笑顔をした若林がいてグッときた。