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愛、アムール (2013) 映画感想

映画

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監督:ミヒャエル・ハネケ

出演:エマニュエル・エヴァジャン=ルイ・トランティニャン

制作国:オーストリア、フランス、ドイツ

 

観た後の率直な感想として、観た記憶を抹消したいほどのつらさを味わった映画だった。つらい。1週間は引きずってしまうほどつらい。

 

そんな風に思ったけれど、一日経ったら割とさっぱりこの映画を受け止められるようになった。この映画は大人向きである。自分にはまだ早かった気がする。もうちょっと人間として熟してから観た方がよかったかもしれない。

 

この映画はジョルジュとアンヌという老夫婦の話。病に倒れたアンヌをジョルジュが介護していく。二人とも元々いい暮らしをしていて仲睦まじく、家具や書斎や服装からは気品を感じる。部屋は二人で住むには大分広い間取りをしている。

 

カメラは意識的に内側に向いている。外で音楽を聴きに行く時も、カメラの焦点は音楽を聴いている観客(夫婦)である。家の中にいてもほとんど二人のどちらかを抑えていてドキュメンタリーのようになっており、二人の生活を垣間見ているような感覚になる。窓はあっても外にカメラの視点が動くことはなく、あくまで部屋の中だけに絞られている。そしてなにより間が長い。人々の生活を切り離して観ているようだ。

 

登場人物は数少ないが、ジョルジュとアンヌの二人の世界が完全に出来上がっていることがよくわかる。そこに介護士や娘が入り込む余地はない。だからこそジョルジュの最後の選択がああなってしまったのだろうか。

 

彼らは音楽家であるから立派な教え子もいて、人から尊敬されてきた身である。プライドがあるのでアンヌは病気でみっともない姿をみられるのに抵抗がある。舐められた態度も傷つく。正直、ジョルジュの行動は介護疲れの末に起きた悲劇のように思えた。ジョルジュの独りよがりの殺人に思えたが、それは間違いだったことに気が付く。それが愛なのだ。もちろん、ジョルジュの一方的なものなのでアンヌの意思がどのようなものだったのかはわからない。彼女のプライドのためにもこれが最適な方法だと思ったのかもしれない。冒頭のシーンで花に囲まれたアンヌの姿は安らかでジョルジュの愛がそこにはある。

 

そして邦題の「愛、アムール」というもの。観る前は「愛、」は不必要だと思っていた。二重の意味になってしまうので。だが観終わって「愛、」があるだけでどんなに救われたことかと思う。「愛」があることによってこの映画は「愛」の物語だということがわかる。二人の愛の形をミヒャエル・ハネケ監督なりに描いたのだ。もうそう解釈するしかない。そうしなければ、ただ絶望して終わってしまう。